2007年07月09日

第118回『東京タワー』

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劇団上海自転車主宰(拠点・愛知) 中野菜保子

 6月アタマに仕事で、舞台演出家・劇作家のG2さんにお会いした。リリー・フランキーさん原作の『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を舞台化される、というコトで、インタビューしに行ったのだ。

 取材前にとにかく原作を読んでおかなくては、とすぐに本屋に走って求めた。本を紐解けば、G2さんが言っていたように、そこには飾らずウソのない、40年間に渡る親子の普遍性が描かれており、すぐに読み終えるコトが出来た。

 折しも初上京・初独り暮らし(いや居候だけれど)のワタシのココロに、なんというか、優しいある種の傷を残す作品となった。

 そういえばワタシにも、こんな、エピソードがある。

 ワタシが上京してすぐに父親が下宿先を訪ねてきた。土砂降りの中、基本的に出不精な父親がスラックスの裾を濡らしながら、駅から徒歩20分もかかるところを歩いてくるなんてめったにないコトだ。

 埃っぽい部屋、若干殺風景なキッチン、薄い壁、2階の住人の足音が響く天井…アパート中をくまなく観察した後に、「…寝るだけだな」とつぶやく。

 家で待つ母にも見せるのだといって携帯で何枚か写真を撮った後、しばらく何も言わなかったが、徐に、「栄養のあるものを食え」と言って、福沢諭吉をくれた。受け取ると、
 
 「使い切れ」

 とヒトコト言った。

 平素こどもらの食欲などについては全く無関心な父が、ワタシがちゃんと食べるかどうかをいたく心配しているコトも嬉しかったが、なによりも、ワタシが“こういうお金”を使えない性分だというコトを理解してくれていたコトにすこぶる感動した。

 雨の中、駅まで父を送ると、「飯を食うか」といってランチをご馳走してくれた。さて帰ろう、というときも、「家までついていこうか」という。そもそも帰る父をワタシが駅まで送ってきたというのに、これではキリがない。当然断り、改札まで父を送って帰った。

 親と子、というのは普遍的な関係の1つなのだな、と確信した瞬間だ。

 インタの時のハナシによると、G2さんの舞台にもその普遍性が色濃く表現されているそうなので、是非1度、ご覧いただきたい。
この記事へのコメント
遅くなりましたが東京公演お疲れ様でした。秋にも公演があるのですね、菜保子さんのお芝居が観られる方がそれだけ増えると思うと、いちファンとして大変嬉しいです。

 今回のお話とても沁みました。わたしも昔家を離れた時期がありその時の事が思い起こされました。近すぎてそれまで気が付かなかった家族の想いに触れることが出来ました。

 ”東京タワー”は以前以前から気になっていたので舞台が観られるといいのですが、まずは本屋へGOなのです。
Posted by みつ at 2007年07月09日 08:11
みつ 様

 応援ほんとうに有難うございました。

 厳密には、公演は冬の予定です。また新しい出会いがあるのかと思うとワクワクします。

 ”家族”というのは、みつさんのおっしゃるように近すぎて、当たり前の存在になってしまいがちですね。大事にしないとな、と思う反面、早く自立して安心させたいな、というキモチもあります。

 『東京タワー』、舞台も本もお勧めです。ハードカバーでも迷わずゲットです。
Posted by 中野菜保子 at 2007年07月09日 15:54
中野さんお帰りなさい。
そしてお疲れ様でした。

 東京での中野さんの舞台を観に行きましたが、のびのびと演技をして、東京の仲間との信頼関係もしっかり築いていた様子が伺えました。苦労を共にして、同じ釜の飯を食べた戦友といった感じでしょうか?
 はるばる池袋まで行ったかいがありました。ちゃんと東に「西武」西に「東武」がありましたし(笑)。
 収穫もかなり多かったようで何よりです。劇団HPのブログ読みましたが、中野さんの人脈びっくりです。
 
 ますますのご活躍を期待しています。
Posted by くにえ at 2007年07月09日 22:14
お父様の
「飯を食うか」
「家までついていこうか」
 の気持ち、すごくよくわかります。
 親心としては、子供に旅はさせないといけないと思いつつも、やはり心配は尽きませんからね。
 帰り際に言うのは「じゃあね」なのか、なんて言って行くべきか困るし、改札通って姿が見えなくなるまでの間ってすごく切ないです。
Posted by あまいもんずき at 2007年07月09日 22:21
くにえ 様

 え!ありがとうございます。わざわざ東京までお越しいただいたのですね。ホントウに有難うございます。しかもブログも。すみません、なんだかチョイチョイ変な写真もあって、内容うすいなーと反省しきりです。

 そうですね、メンバーの人柄には恵まれました。初出陣でしたので、ホントよかったです。
 池袋わたしも驚きました。あれは何ででしょうね、心臓の名称みたいな感じで視点が地球視点なんでしょうか。

 じわじわ東京進出、そして定着(笑)しようと思っております。ご指導・ご贔屓に何卒よろしくお願いいたします。


あまいもんずき 様

 ほんとに、親には申し訳ないなあと思います。心配かけっぱなしです。いつできるんだ、親孝行…と思います。

 ワタシは常に「ほな」とか「ほなまた」って言います。次に続く感じがするからです。切ないですが、そういうところから逃げたくないキモチのほうが強いですね。だからちゃんと、階段を下りるまで見送りました。

 余談ですが、万一(笑)結婚したら、夫を看取ってから死にたいです。そこまで長生きするかどうかわかりませんが…。


 
Posted by 中野菜保子 at 2007年07月10日 00:13
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