2007年08月21日

第百五十四回「見世物稼業」

yamasiro
廣島屋でキュ!廣島屋

「見世物稼業 安田里美一代記」は、つい先日読み終えた聞き書き本のタイトルである。

 人間ポンプとして全国を巡業、テレビでもその芸を披露した安田里美さんの語る大正・昭和の芸能史でもあるこの本は、ボクたちの世代でかろうじて生で見た記憶を持つ「見世物小屋」に携わる人々の興味深い話が満載で、一読巻おくことあたわずというべき大変面白い本である。

 見世物小屋……

 地方のお祭り、神社の縁日などで仮設舞台を作り、入り口で賑やかに口上を述べてお客を呼び込む。舞台の上で繰り広げられるのは、奇術や芝居や因果物の見世物(クモ娘、カニ男などなど、それには仕掛けがあるもののほかに、先天的な体の部分の欠落・変形などをネタにしているものもあった)、気合術(腕に針を通したり、目にボタンをいれてそれに紐をつけ、バケツを回したり)、そうして人間ポンプ(碁石を呑んでお客さんのいうとおりの色を出したり、金魚を飲んで糸の先につけた針で吊り上げたり、ガソリンを飲んで火を吹いたり)などなど。犬や猿を使った芝居もあったそうだ。

 そのほかにも、タカマチ(縁日)に立つ同じような仮設舞台にはサーカスやお化け屋敷、ノゾキカラクリなどもあった。安田さんはそんな出し物にも参加したことがあるという。

 こういう見世物芸には以前から興味があったのだが、今回この本を読んでびっくりしたのは、入り口で行う呼び込みの重要性だ。お客さんが多いとき少ないときによって、小屋の中で演じている演者と入り口の呼び込み役が呼吸を合わせてお客さんの入れ替えを調整したりするのだという。

 特に呼び込みのタンカ(口上)は、著者が安田さんの語るそのままを文字に落としているのだが、それを読んだだけで頭の中に浮かぶのだ、朗々と切々と飄々と口上を述べ仮設舞台の入り口付近に集まる人々を誘う安田さんの姿が。(それはたぶん、著者である鵜飼正樹さんと安田さんの絶妙な距離感が文章の端々から感じられて、魅力的な本になっているのだと思うのだけれど、それはまた別の話なのでここでは詳しく触れない)

 全国に沢山あったこうした興行団体は、今では一つくらいしかないそうだ。東京では靖国神社や花園神社などのお祭で見ることができる。

 平成の今の時代に、大正・昭和の見世物小屋をそのまま復活させることができるとは思っていないが、劣悪な舞台の下、間近に迫るお客さんの厳しい(そして冷たい)目に鍛えられたその芸能は、今の時代にこそ必要なものではないか、ボクは思う。

 つづきは明日のお楽しみ!
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