岡崎藝術座主宰
神里雄大 浮き草稼業であります。お芝居を芝居するのはそういうことなのです。という夢を見ました。メディアの王者、ザ・テレビでも、トリノ中なのでスキー滑降の回転の如く、目まぐるしい入れ代り立ち代りの芸能人(芸NO人)・芸人・俳優です。ましてや、一般の方から、なんだかわからない、あっち側の人、というふうに思われてもしょうがない、小劇場の私どもは、よけいにふわふわ新雪のようです。ちなみに夢を見たというのは嘘でした。私はいま、イースタンユースの『雨曝しなら濡れるがいいさ』を聞きながらこれを書いています。
お芝居は観客もスタッフも観客も、劇場に集まらなければ成立しない、ということはもう話しました。ですから公演期間中、スタッフ、俳優は特に、いつも決まった時間に劇場に集まらなければなりません。映像と違い、一度いいものを保存すればリピートできるものでもありません。各人ごとにシーンを撮ればいいものでもなく、稽古は皆が集まって行う必要があります。そして、観客の数も限られるため、生々しい話で申し訳ないのですが、利益は必ず限られてしまいます。何が言いたいのかというと、お芝居は作るのに時間がかかる、なのに収入が少ない、ということなのです。企業のスポンサーがついたり、高い入場料でも大劇場が満員になるような商業演劇でない私どもは、まったくバイトをしなければどうにもパンが食べられません。
ところがどうでしょう、学生のアルバイトならともかく、生活を成立させるためには毎日働かなければならない→しかし稽古が始まるとそう定期的に働けない→そんな頻繁に休むなら明日から来なくていいよ、となってしまうのです。だからお芝居をやっている人は時間に融通のきくアルバイトを探します。そういうのを皆やりたがるのです。そういうわけで私の職場は役者だとか、環境が似ているバンドマンだとかが多いようです。
以前、アルバイト情報に「夢を持っている方、大募集!」などいう謳い文句で、私を誘惑するものがありました。これはきっと時間に融通が利く仕事です。さっそく面接を受けに行き、芝居をやっているので公演のときは休まなければならない、というと面接官は露骨に嫌な顔をし、連絡はありませんでした。
テレビCMでは「夢を持つってことは大事なんだ」と断言していますが、よくわからないことをしている、まあフリーターは刹那的で財政を圧迫するから就職をしろよ、と政党はフリーターを煙草のように虐げ、企業はコストダウンでいつでも首を切れる存在として扱う、そんな僕らは、ああフリーター。
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以前、アルバイト情報にやはり「夢を持っている方、大募集!」などいう謳い文句で、私を誘惑するものがあり、夢のある面接もクリア、やったと思い、夢のある仕事に向かうとそれは例のマルチ商法でした。そしてそこで働く人たちは、確かに夢に燃えており、それがどんな夢がなのかと思えば、フェラーリに乗る、とか六本木ヒルズに住む、とかでした。
「あっち側」の私は、切なくなって空を見上げると雪が降ってきたのでした。なぜだか私だけ濡れている気がしました。新宿を行く人々の傘はFENDI、私のは折れていました。それでも、そんな愚痴を言ってもしょうがないよね、と帰宅ラッシュの小田急に乗りました。
まわりはスーツばかり、私は私服で、満員電車は私だけ立つスペースがとても少ない気がするのだけど、気のせいなんだと思いました。涙がちょっとの雪なら溶かしちまうのです。
とても長くなってしまいました。すいません、後半のFENDIあたりは嘘でした。夢です。