2006年12月23日

「舞台時評という感想」(3)

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立花英治


先日、「年末回顧」に関して、ある依頼が飛び込んできた。今年観た舞台作品の中で、印象に残ったものを3本挙げてほしい、という内容だった。

私以外にも複数の方々に、同様の依頼が舞い込んだようだ。

ここで、ふと、ある疑問が思い浮かんだ。それは、選ばれなかった作品についての”前提”である。

選者は、ある作品を〈観て〉今年の3本に推さなかったのか、〈観なかったので〉推さなかったのか。その前提について言及されないかぎり、誤解が生じてしまうかもしれない。

読者は、選ばれた作品を目にして、無意識のうちに、今年上演された、あらゆる作品の中から、その3本が選ばれたと思い込みはしないだろうか。

その点を意識しておかないと、ある意味で、不公平な評価を受け入れることにもなりかねない。

特に、劇団や主催者側は、観劇した上で、選択されたのならまだしも、観劇せずに、選考から漏れたとしたら、どのような反応を示すだろうか。評価が不公平だと感じはないだろうか。

そう考えると、今年の3本、という企画は、罪のある側面を持っているようにも想えてくる。

そんなことを空想しながら、年末までに、果たして、どういう形で回顧ができるのか、考え続けている。


◆ご意見をお待ちしています。
think_arts@1kw.jp

2006年11月25日

「舞台時評という感想」(2)

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立花英治


前回は、若い劇作家らが小世界の人間模様を好んで描き、そのこと自体が、現代のある面を反映している、という点について、『朝日新聞』の夕刊を引用しながら、言及しました。

今回は、日本の演劇で一番欠けてしまっている点について、触れます。

今月12日、新国立劇場で『シラノ・ド・ベルジュラック』を観劇した際、『演出家の仕事 鈴木忠志読本』という書籍を購入しました。

『シラノ…』の圧倒的な美しさに魅せられ、早速、帰宅途中の車中で、この本を読み始めました。

「では、なぜ、そうした作品を新国立劇場で上演するのか。それはいま、日本の演劇にいちばん欠けてしまった演劇というものの力が、そこに表れているからです」
(「対談 『見えないものを見せる』ということ」『演出家の仕事 鈴木忠志読本』P64)


「そうした作品」というのは、今月初めに上演された、鈴木忠志さん演出の『オイディプス王』『イワーノフ』『シラノ…』の三作品と、同じく来月上演される『リア王』のことです。

一方、「日本の演劇にいちばん欠けてしまった演劇というものの力が、そこに表れている」というのは、以下のことを指しています。

「つまり、人間をどう見るのか、日本人なら日本人をどう見るのか。社会的・歴史的コンテクストのなかでこのように見ます、という態度が日本の演劇には欠落している。人間への見方を深めるためには、こういうシチュエイションを絶対に必要としていて、このシチュエイションのなかにこの人物を置くと、現在の日本人の歴史的文脈や無意識性が見える、というかたちで演劇を社会問題にできるような演劇のテクストがないし、その書き方や演出方法もない。だから、いま、これらの作品を上演してみよう、ということなんです」
(同上)


前回の続きということで関連づけるなら、若い劇作家たちが描く小世界の人間模様には、「人間をどう見るのか」という視点は含まれていないのだろうか。

そして、より深刻なのは、「現在の日本人の歴史的文脈や無意識性が見える、というかたちで演劇を社会問題にできるような演劇のテクストがないし、その書き方や演出方法もない」という点であり、さらに、それは一体、どうしてなのか、と疑問が募る。

引用ばかりして、他人のふんどしで相撲をとってばかりですが、当面は、他人の発想を触媒に思考を深めつつ、折々に、自分なりの回答を記していきたいと想っています。


◆ご意見をお待ちしています。
think_arts@1kw.jp

2006年11月11日

「舞台時評という感想」(1)

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立花英治


ずっと、考え続けている。

「個人的には劇がこぢんまりまとまることに物足りなさを覚えるが、若い作家たちが小世界の人間模様を好んで描き、それが支持されていることは注目すべき傾向だと思う。そのこと自体が、現代のある面を反映しているようにも感じられる」
(「演劇/ONEOR8『電光石火』」『朝日新聞』2006年10月28日付・夕刊)

この見方には同感だ。

ずっと、考えているのは、なぜ、「若い作家たちが小世界の人間模様を好んで」描くのか、ということだ。「現代のある面を反映している」とは、具体的に、どんな面を指しているのか。

そういったことを手始めに、この連載では「現代演劇」のあらゆる面について、手探りしていくつもりです。

なお、連載名の「舞台時評という感想」は、荒川洋治さんの『文芸時評という感想』(四月社)にちなんで命名しました。

今後ともよろしくお願いします。

◆ご意見をお待ちしています。
think_arts@1kw.jp

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